私たちは、生活の中で様々な画像情報を目にしています。例えば、よく手に取るスマートフォンや雑誌でも画像を見かけますし、外へ出れば飲食店の大きな看板や壁に貼られた広告を見ることもあります。
このような画像情報には様々な色が使われていますが、その媒体によって、色の表現方法が異なることをご存知でしたか?例えば、実際に紙に印刷された雑誌と、電子書籍版の雑誌を見比べたとき、同じ色が映っているように見えますが、実はそれぞれ異なる方法で作られた色になっているのです。紙と画面、両者には何の違いがあるのでしょうか?今回はその理由や取り扱い方法など、色の表現方法のしくみについて解説していきます。
印刷物における色のしくみ
学生時代に絵の具を使う授業で、欲しい色の絵の具を持っていないときは他の色を混ぜて色を作った経験が、誰にでもあるのではないでしょうか。
チラシなどの印刷物も、色を混ぜて表現しています。絵の具セットには、白や赤、ピンク、紫、青、緑、黄色…など少なくとも10色以上の色が用意されていますが、印刷物では、青(C・シアン)、赤(M・マゼンタ)、黃(Y・イエロー)、黒(K)の4色のインクが基本色となることが一般的で、それぞれの頭文字を取ってCMYKカラーモデルと呼ばれます。
色を「混ぜる」と先述しましたが、印刷機の中で物理的に色をかき混ぜることはしません。それぞれの基本色だけで濃淡をつけた図柄を用意し、これらをすべて色版画のように重ねることで、よく見かける色とりどりの写真や画像になります。
身近な印刷物を拡大して見ると、4色のドットが重なっていることがわかります。
色を重ねるほど濃くくすんだ色になり、また、全ての色を混ぜると黒になるという特徴があります。
電子機器における色のしくみ
印刷物ではインク等の塗料で色を表現していましたが、スマートフォンやテレビなどの電子機器ではどうでしょうか。機器の中にインクを入れて表示させることはできないので、画面では光で色を表現します。基本となる色は、光の三原色である赤(R・レッド)、緑(G・グリーン)、青(B・ブルー)の3色であることから、RGBカラーモデルと呼ばれます。
パソコンやテレビのモニターを間近で見ると、この3色の小さな点が並んで集合していることが分かります。
この3色の組み合わせによって、様々な色を表現しています。
CMYKとRGBの違い
どちらのカラーモデルも基本色の組み合わせ次第で様々な色が表現できますが、RGBカラーモデルを使ってCMYKカラーモデルと似た色の組み合わせを行っても、できあがる色が異なります。
例えば、パソコンのペイントソフトで赤と緑を重ねると黄色になる一方で、絵の具で赤と緑を混ぜると、やや黄色みがかった灰色になります。
印刷物を見るときに、私たちは光の反射で色を識別しますが、電子機器においては、モニターから発生する色の付いた光線そのものを見ているため、このような違いがうまれます。
他にも、RGBカラーモデルでは、すべての色を混ぜ合わせると白ができ、すべての色を取り除くと、光がない状態になるため黒くなるのですが、CMYKカラーモデルでは全ての色を混ぜると黒になるように、全く逆の変化が起こることも2つのカラーモデルの大きな違いと言えます。
カラーモードの切り替えを行う際には注意が必要
パソコンで画像編集をしたり、画像データを作る際、印刷物なのにRGBで制作してしまっていたり、ウェブサイトで使用するデータなのにCMYKで制作してしまっていた…なんてことがまれに発生します。
パソコンで操作できるいくつかのペイントソフトや画像編集ソフトでは、2つのカラーモデルを切り替える機能があり、それぞれ目的に応じた適切なモードに後から変更することができます。しかし、このような機能を使って切り替えると、意図せず色味が本来の状態からずれてしまうことがあります。
これはRGBとCMYKで表現できる色の数(色域)が異なるために起こる現象で、RGBよりも色域が狭いCMYKに変換される際に、CMYKでは表現しきれない色が発生すると、上の図のような、ややくすんだ色になってしまいます。
一度くすんでしまった色を自動的に元に戻すことはできませんが、目視で、可能な限り元の色に近づけることで対処する必要があります。
色がくすんでしまう場合の対処法
カラーモード変換後に明度・彩度を調整する
くすみを直す方法はいくつかありますが、そのうちの一つとして、変換前の画像と見比べながら彩度などの調整を行い、元の色に近づけていく方法が挙げられます。
先ほど、くすみの原因は、2つのカラーモデルの色域が異なることだと述べました。ですので、目視で確認しながら、それぞれのカラーモデルの色域内で色味を似せていく作業を行うことで、変換前の鮮やかさに近づけることができるのです。
特にRGBに対してCMYKでは、エメラルドグリーンやレモンイエローのような、目が覚めるような明るく強い色の表現が苦手なため、彩度を上げたり、場合によってはPhotoshopのトーンカーブ機能などで、明るさやコントラストを調整していきます。
最後に
普段なにげなく見る「色」は、その媒体に合わせて異なる表現方法が用いられていました。紙には「CMYK」とよばれる4色のインクの組み合わせで。テレビなどの画面には「RGB」と呼ばれる3色の光の組み合わせで多様な色が表現されるのです。
近年、オンデマンド印刷の普及や、小ロットの発注も可能な格安印刷サービスが拡充したことにより、企業だけでなく個人も印刷業者とデータのやり取りをする機会が多くなりました。中には、カラーモデルの違いを知らないままデータを送り、印刷業者から指定されたカラーモデルではないという理由から、データチェックの段階で返されてしまったり、仕上がったものを確認して初めて想像していた色と違うことが分かり、失敗したというケースも少なくないようです。
CMYKと RGBの違いを理解し、紙・画面のどちらで使用するデータなのかを踏まえ、それぞれの媒体に合った適切なカラーモードを選択しましょう。