印刷物を印刷会社に発注しよう!と思った時に、紙の厚みを選ぼうとすると「kg」という単位を目にすることが多いのではないでしょうか?
紙1枚がそこまで重たいはずはないですし、そもそも厚みなので、長さを示す単位である「mm」が使われるのでは?と誰もが思うはず。
今回は、このkgが何を示しているのか、kg以外の紙の厚みを測る方法や、どの厚みがどのような用途に適しているのかをご紹介します。
厚さの単位
連量(れんりょう)/斤量(きんりょう)(kg)
製紙会社や印刷会社で多く使われている単位です。単位には「kg」が用いられますが、紙1枚の重さを表しているものではありません。
紙の取引をするために1枚ずつ枚数を数えて販売するのは難しいため、一般的に紙1000枚を取引の単位としています。この1000枚を「1連」と言い、1連分の紙の重さを「連量」と呼びます。1000枚分の紙の重さで、紙の厚みを区別します。
「連」と呼ばれるようになった由来は、英語の「Ream・リーム」(元々紙の単位として使われる他、動詞としては大量に印刷する・穴を開けるの意)が日本でも使われるようになったからと言われています。
1000枚分数えたからといって、どんなサイズの紙でも連量になるわけではありません。
普段私達が手にする印刷物はA4やB5など様々なサイズがありますが、通常印刷物は、大きな紙に何枚分かのデータを印刷して、その後仕上がりサイズに裁断します。
連量は仕上がりサイズになる前の大きな紙、「原紙」と呼ばれる紙を使って測ります。
原紙は工業規格によってサイズが定められており、「A列本判」、「B列本判」、「菊判」、「四六判」、「ハトロン判」などの種類があり、下の図のようにそれぞれ異なる大きさになっています。
連量は数字が大きいほど厚い紙になりますが、原紙のサイズや、紙質によっては、同じ連量でも実際の厚みは若干異なるので、注意が必要です。
坪量(つぼりょう)/米坪(べいつぼ)(g/m²)
こちらも印刷業界ではよく使われる単位で、g/m²と書いてある通り、紙一枚の1平方メートルあたりの重さを表します。
市販されているコピー用紙や、ボール紙や包装用紙にこの単位がよく使われます。
連量と同様に、数字が大きいほど厚い紙になるのですが、紙質によって同じ坪量でも実際の厚みが若干異なることがあります。
紙厚(μm)
紙1枚の厚みを、紙専用のはかりを用いて測ります。紙の「厚み」といえば、まず想像する測り方なのではないでしょうか。
ただし、紙の種類にもよりますが、ほとんどの紙は1枚の厚みが1ミリにも満たないほど薄いため、単位はmmではなく、μm(マイクロメートル)を用います。μは0.001mm、つまり1mmの1000分の1の単位となります。
同じ紙を測ってもパルプの密度にばらつきがあると、測る場所によって異なる数値になることがあるため、連量、坪量ほど使われる頻度は高くありません。
別々の紙どうしの厚さを測って比較する際に用いられることが多いようです。
用途ごとに適した紙の厚さ
厚さを選ぶポイント
紙の厚さを選ぶ際には、以下の点に注目します。
- 何部くらい発行するのか
- どれくらい長く保管してもらいたいか
- 紙の厚みにより他のものとかさばってしまわないか
- 手に取った人にどんな印象を与えたいか
また、紙の厚みによって、それぞれにメリットとデメリットがあります。
薄い紙のメリット
- 安価で大量生産に向いている
- 一度により多い枚数を運べるため、輸送コストも節約できる
薄い紙のデメリット
- 紙が薄いため、図柄が紙裏に透けやすい
- 折りや製本などの加工が難しい
厚い紙のメリット
- 重厚感があり、手に取った人に堅実な印象を与えられる
- 長期間の保存がしやすい
厚い紙のデメリット
- インキの乾きが遅い
- 背割れ(折り目に沿ってインキが剥がれる現象)が起きやすい
いきなり厚みを選べと言われても、どんな場合にどんな厚みの紙を使えば良いのかが分かりにくいかと思います。そこで、用途別によく利用されている紙の厚みについてまとめてみました。
チラシ
チラシはその地域一帯に配られることが多いため、紙の中でも単価が安く、大量印刷に向いている薄めの紙が好まれます。
新聞などの折込チラシには、かさばりにくいように薄手の58kg、一般的なポスティングチラシは70~90kg程度の紙が良いと言われます。(70kgはコピー用紙と同じくらいの厚さと言われています)
厚みの種類は1kg刻みでラインナップされていますが、弊社ではその中でも特に73kgの連量で発注することが多いです。チラシの中でも、住宅販売など価格の高い商品を取り扱う会社の広告など、しっかりめの印象を持たせたい場合は90kgの連量の紙を使用します。
パンフレット、チケット、会社案内
特定の地域に大量に投函したり、見終われば捨てられることを想定されたチラシとは異なり、人が屋内外問わず手に取って見て、持ち帰って保存してもらうことを前提としているので、コピー用紙よりやや厚めの紙が好まれます。
およそ110kg、135kg程度の厚みの紙が主流ですが、厚めの180kgくらいの紙を使用する場合もあります。180kgともなると、紙のコシが強く出てかなりしっかりした仕上がりになるのですが、折り加工をした際に、「背割れ」が起きてしまうおそれもあります。デザインやレイアウト制作の際には、折り目にかかりそうなところはなるべく図柄を載せないなどの工夫をしましょう。
名刺、DM、ショップカード
数ある印刷物の中でも、名刺は特に長期保管をしてもらう目的で作るため、紙の厚みも厚めのものがおすすめです。
主に180kg、220kgや235kg程度の厚みが好まれます。
名刺は、紙の質感や厚みが、相手に与える印象を変えることがあります。例えば弁護士の名刺には、信頼感や重厚感をもたれやすい厚手の220kg、営業の名刺には、軽やかで親しみをもたれやすい180kgの紙を使うなど、目的に応じた厚みを選ぶとよいでしょう。
ショップカードは、長期で保管してもらうのはもちろんですが、お財布の中に入れた時にかさばらないことも重要です。耐久性がまずまずあり、厚くなりすぎない180kgの紙がメジャーです。
また、箔押しなどの特殊な加工を施す場合は、260kgなどのかなり厚めの紙を使用することもあります。
おわりに
一般的に厚みを表す「mm」ではなく重さで紙の厚みが表されるのは、一回の取引で数百~数千以上などと、一度に大量の枚数が売買される紙だからこそ生まれた考え方なのかもしれません。
仕事で広報に携わったり、名刺を作ったり、はたまた個人で印刷物を発注するなど、紙の厚みを選ぶ機会に直面するとき、厚みが「kg」や「g/㎡」ではイメージしづらいかもしれません。どの厚みがどのような用途に向いているか、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
印刷会社の中には、厚さ別で印刷物のサンプルをもらえるところもあります。よりイメージ通りの印刷物に仕上げるために、実制作に入る前にサンプルを請求したり、制作会社へ厚みの目安を聞くことをおすすめします。