「色」はどのようにして生まれる?-ヒトの色覚の進化-

スタッフのつぶやき

普段、私たちが目にする風景は色彩で溢れています。宙を舞う花火、美しい絵画、和を感じる日本庭園。このような美しい「色」があることで私たちの人生はより豊かになっていると言っても過言ではありません。それもそのはず、この発達した視覚システムが霊長類の最大の特徴だと言われているからなのです。
ですが、この「色」がどのようにして誕生したかを皆さんはご存じでしょうか?「色」はどこで生まれ、どのように進化してきたのか。この記事ではそんな素朴な疑問について少し深堀りしていきたいと思います。

「色」を決めているのは人間の脳

色は存在しない

実は色を決定しているのは人間の脳。私たち人間には「色覚」というものが備わっています。色覚とは、その字の通り「色を感じ見分ける感覚」のことです。この色覚が働くことによって初めて色として捉えることができるのです。ちなみに、鮮明な色覚を持っているのは昆虫動物と脊椎動物のみだと言われています。

「色覚」と「光」

「色覚」によって人間は色を認識することができるということが分かりました。では、どのようにして私たちはこの色覚を発動させているのでしょうか?それは、真っ暗な部屋を想像してみると非常に分かりやすくなります。暗い部屋では日中と比較すると物体の色を判断することが困難です。つまり、色覚は「光」によって発動します。暗い部屋に日光が差し込んだ時やランプの明かりを灯した時、物体が光反射をおこしているため、鮮明な「色」としてとらえることができるのです。

ここでちょこっと雑学。
光とは「波」であり「粒子」であると解釈されているんだ。つまり、太陽や電球などの発光体は光の3色の波(光)から成っているから見えるんだ。波はこの後でもキーワードになるよ!

すまいるさん
すまいるさん

「眼」と「脳」

色覚が発動する最初の入り口はもちろん「眼」から入る視覚情報。眼で得た情報が脳に伝達され、脳が「色」として認識しています。この一連のカギを握るのは、眼球の網膜上に分布している視細胞と呼ばれる細胞。この視細胞は、桿体(かんたい)細胞と錐体(すいたい)細胞という2種類の細胞から成り立っています。

桿体細胞

光の明暗を感知し、暗いところではたらく細胞です。光に対し非常に感度が良く、桿体細胞のおかげで暗い場所でもわずかな光を素早く認識することができます。

錐体細胞

色味を感知し、明るいところではたらく細胞です。

錐体細胞はさらに3つに分類でき、赤(長い波)、緑(中間の波)、青(短い波)と、特定の範囲の波長に最も反応するオプシン*をもっています。この光の信号の強さが脳に送られ、色として認識されるというわけです。ときどき、人間と他の動物が見ている色は違うなどと言われる理由には、この錐体細胞の数が関係しています。例えば、鳥類は赤青緑に加え、近紫外線に反応する錐体細胞を持っています。これにより、人間よりも多くの色が見えていると言われています。また、私たちに身近なイヌやネコには、錐体細胞の数が赤と青の2種類しかないことから、見えている色数が人間よりも少ないのです。

オプシン:錐体細胞を構成するタンパク質部分の総称

すまいるさん
すまいるさん

色覚異常(色盲/色弱)も、この錐体細胞が関係しているんだ。

行動特性と色覚の深い関係

先ほど触れたように、人間には錐体細胞が3種類しかないことから、真の意味での「フルカラー」で見る能力がありません。これは一体なぜなのでしょうか。それは、遺伝子レベルでの人類の進化に隠されています。

約20年に及ぶ色覚研究で明らかに

脊椎動物(魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類)の色覚は、網膜の中にどのタイプの錐体細胞を持つかによって決まります。かつて哺乳類の祖先である爬虫類は、4種類全ての錐体細胞を持っていました。

すまいるさん
すまいるさん

鳥類が人間より多くの色が見えると紹介したけど、元々は僕たちも同じだったんだ!

ところが、哺乳類の色覚進化が始まったのが9000万年前。古代の哺乳類は夜行性であったため、色覚が生存に必須ではありませんでした。これにより、哺乳類は4種類あった錐体細胞のうち、緑オプシンと紫外線オプシンの2種類を失うことになります。
その後、恐竜が絶滅したことにより日中に活動する哺乳類が激増し、哺乳類の行動特性が変化したと言われています。この結果、人類は緑オプシンを再獲得し、赤青緑の3種類の錐体細胞を持つようになりました。哺乳類が夜行性から昼行性へ変化した後、「光」を完全に感知することができるようになるまで、実に6000万年かかったと言われています。

なぜ人間は3色型色覚なのか

▼紫外線オプシンが青オプシンに

ここで疑問となるのは、なぜ人間は「紫外線」を色覚できないのかという点です。その理由はいたってシンプル。アメリカのエモリー大学に拠点を置く科学者チームが20年にわたり行った研究により、その理由が明らかになりました。紫外線オプシンは、鳥や虫にとっては生存に有利であるが、人間にとっては切実な生命線ではなかったからだそう。また、数々の遺伝子研究の結果、人間は紫外線を青としてスライドする形で反映させるようになったと結論付けています。

▼赤オプシンが緑オプシンに

また、これと同時期に赤オプシンが2種類重複発生してしまったことから、赤オプシンを緑オプシンに変異させることで人類は緑の錐体細胞を再獲得したことが明らかになっています。これら2つの変異は、約3000万年前までに既に完了しているのだとか。これにより人間はRGBの色空間を得たと言われています。

ここまで読むと紫外線という言葉の意味がなんとなく分かるかも。
紫は最も波長が短い領域にあるんだ。紫外線は、波長の領域が人間がギリギリ見える「紫よりも外」にあるから「紫外線」と呼ばれているんだ!

すまいるさん
すまいるさん

おわりに

いかがだったでしょうか。この記事では、「色」の概念をはじめ、どのようにして私たちが色覚を発達させてきたのかについてをご紹介しました。デザインの現場で当たり前のように使用されているRGBカラーも、人間が赤青緑を認知する細胞が進化したことで成り立っているのですね。
この記事が皆様のお役に立てたら嬉しいです。

SMILE MISSION Inc.

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Web制作、グラフィック制作をはじめとする群馬県前橋市のデザイン会社、「株式会社スマイルミッション」の公式ブログページです。 Web制作やグラフィック制作に関するコンテンツをお届けします。

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